私たちの課題。
暴落の際「底値でロングエントリー」できるようになること。
そこで、さまざまな暴落を検証しながら、
底値買いの精度を高めていきたい。
題して「底値迎撃演習」だ。
絶妙なタイミングで底値を迎え撃つ。
今回は、
リーマンショックにおけるナスダック100【NDX】の底値を考察してみよう。
リーマンショックは、過去最大級の暴落のひとつである。
下落率、54.5%を記録した。
株価回復にも長い時間がかかった。
直近最高値から底値を経て次の最高値に達するまで、
営業日ベースで800日を要した。
私なりの表現で言うなら、「長周期」の暴落である。
長期投資に忍耐は必須だが、800日の苦行に耐えられるだろうか?
底値を探るツールとして、テクニカル指標を使う。
さまざまな種類があるが、
オシレーター系のテクニカル指標のひとつに「RCI」というものがある。
これに独自に改良を加えたものが、「マリアRCI」という指標である。
万能な指標は存在しないと承知の上で、
現時点でもっとも精度の高い指標として活用している。
「マリアRCI」の使い方は簡単だ。
「マイナス240%以下」になったら「売られ過ぎ」と判断し、
底値買いのタイミングとみなす。
これをリーマンショックにあてはめてみよう。
上記のグラフは、
直近最高値から、底値を経て、次の最高値更新までの推移を示している。
この期間、マリアRCIが、何回「売られ過ぎ」とアラームを発出したか?
答えは12回だ。
緑の矢印で示したタイミングに相当する。
底値に至るまでに10回、底値から回復する途中で2回、合計12回アラームが出た。
12回というアラーム回数、多いとみるか、少ないとみるか?
多いとみる人はこう主張するに違いない。
「12回分も余力を持つことなど不可能。
暴落時に追加投入しようにも、途中で弾切れしてしまうではないか。
底値判定というには精度が低いと言わざるを得ない。
数打てば当たるというのが実態ではないか?」
反対に、少ないとみる人はこう言うだろう。
「いや、リーマンショックは百年に一度と言われたくらいだから、
アラームが頻発するのはある意味当然。
それを12回に抑えられたのだから、少ない方ではないか?」
私はこう思う。
リーマンショックほどの大規模な暴落になると、
他の暴落で通用していたテクニカル指標も通用しなくなる。
そもそも想定する暴落の規模が違うのだから、
通用しないのも当たり前。
底値判定の精度を高めるためには、
長周期になればなるほど、
テクニカル指標のパラメーターも、長周期に合わせて設定する必要がある。
すなわち、マリアRCIで使用しているパラメーターを変える必要があるのだ。
現状のマリアRCIは、短周期用に最適化しているから、
これを長周期用に設定し直すのだ。
具体的には、現状、
5日、10日、20日のRCIの組み合わせでできているマリアRCIだが、
これを長周期用に設定を変える。
例えば、20日、40日、80日といったように。
そうすれば、上記の12回という回数を減らすことができ、
結果として底値判定の精度を高めることができるだろう。
だが、ここで立ち止まって考えよう。
冷徹な事実として言えることは、
これから起こりうる暴落が、長周期となるのか、短周期となるのか、
あらかじめ予見することが事実上不可能ということ。
コロナショックのように短周期で回復する暴落もあるのだ。
暴落が始まった時点で、どれだけ下落するのか、
回復までどれほどの日数を要するか、
その暴落の性質を、誰が正確に予想できるだろうか。
予想など、できるわけがない。
暴落の姿がどういったものになるかは、
なってみないとわからないのが実相である。
なってみて、
そのときに反応する市場参加者の売買が、
予想を大いに変化させることにもなるのだ。
よって、パラメーターを事前に周期に合わせて最適化することは、
残念ながら不可能だ。
周期を予想できないからだ。
事後のバックテストなら可能でも、
未知の暴落に対しては、事前に最適なパラメーターを知るすべがないのだ。
そこで私はこうする。
パラメーターは現状のままで、
発生頻度の高い短周期暴落に最適化されたものを使用する。
今後起こるか起こらないかわからない、
大規模な長周期暴落を基準にして制度設計してしまうと、
通常の短周期暴落での底値買いのタイミングを逃してしまう。
それを私は恐れる。
だから私は、
あくまでも短周期のパラメーターで運用していこうと考えている。